小説、その2「井森家の記憶」

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2020年2月のブログ記事

  • 古希の三人娘(第46回)

    第46回(2/19)  同じ物を食べている昭夫はというと、若い頃から太らない体質で、春子の一・五倍は食べているのだが、いくら食べても肥えず、ちょっとでも食べる量が少ないと体重が減ってしまう。  それにしても現役時代の昭夫は平日は飲んで帰宅、休日は朝早くからひとりで釣り、と、家庭を顧みることはなかっ... 続きをみる

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  • 古希の三人娘(第45回)

    第45回(2/17)  富由美と別れて自宅に戻った春子は夫の昭夫に夢が丘駅の帰路、スーパで求めたシャケ弁当をひとつ渡した。シャケ弁当はひとつ三百九十円、現役時代の昭夫は毎晩のように飲んだくれての帰宅で、ほとんど自宅で晩御飯を食べなかったのだが、仕事を辞めて家にいるようになってからの昭夫は、春子が用... 続きをみる

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  • 古希の三人娘(第44回)

    第44回(2/15)     「春子はお子さんとお孫さんを残したんだから、立派よ。もっと自分に自信を持ちなさい!」 「そぉーだわね。夫は定年まで真面目に働いてお給料を渡してくれたし、今の時代、孫どころか、結婚しない子供、下手すると引きこもりの子供が多くいるというのに、あたしの場合、二人の娘は結婚し... 続きをみる

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  • 古希の三人娘(第43回)

    第43回(2/13) でもねぇー、今や、ひとりでおもしろおかしく生きてく元気がないわぁー。だって、この年になって、今更、人生をやり直すには遅すぎるもの」 「あらっ! そんなことないって、古希になってもまだひとりで充分楽しく生きていけるって!」 「えっ! 富由美、なぜ突如として、そんな元気な台詞を口... 続きをみる

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  • 古希の三人娘(第42回)

    第42回(2/11)  春子の話では意外なことに連れ合いは春子不在を喜んだらしい。  老夫婦ともなると、妻は、亭主は達者で留守がいい、のだが、夫もまた、女房は達者で留守がいい、と、なるらしい。  二十一歳で結婚した春子は、まもなく金婚式を迎えるのだが、世間では五十年間も共に暮らした夫婦はめでたいら... 続きをみる

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  • 古希の三人娘(第41回)

    第41回(2/9) 「突然、呼び出しちゃって、申し訳なかったわねぇー」 「いいえ、どういたしまして、本日、何も予定なし、暇だから」  今朝、富由美は春子から、「急だけど、今日会えるかしら?」の電話をもらって、夢が丘駅近くのいつも会う所、喫茶店田園にやって来た。   ひとり暮らしで無職の富由美はすべ... 続きをみる

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  • 古希の三人娘(第40回)

    第40回(2/7) 「ひとり暮らしは、健康でさえいれば最高ですもんね」 「はい、他界した妻には誠に申し訳ないのですが、我が人生、今が最高ですね。若い頃から好きだった文学の世界に思う存分浸られて、ひがな一日、読みたければ本を開いたり、創作をしたくなれば、小説を書いたり、外の空気を吸いたくなれば、買い... 続きをみる

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  • 古希の三人娘(第39回)

    第39回(2/4) 「ふたりのお遊びを祝して、かんぱぁーい」 「かんぱぁーい」  富由美のおどけた口調に伊吹が頬を崩した。 「あぁー、おいしい」 「あぁー、うまい」  富由美は少しはお酒をたしなむので、外食の際には少しのアルコールを体内にとりいれる。  良い酒は人間関係を円滑にする。飲めばみな友達... 続きをみる

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