小説、その2「井森家の記憶」

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2021年10月のブログ記事

  • 井森家の記憶(第93回)

    第93回(10/26)  その姉は65歳で糖尿病を発症、他界前の数年間はインシュリン注射を打ちながら家事と仕事と学業をこなしていた。が、他界直前は人工透析を受けなければ生きられない身体だったが、直接の死因は肺がんだった。  糖尿病といえば祖母も糖尿病だったので、その病気は遺伝するらしいので、糖尿病... 続きをみる

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  • 井森家の記憶(第92回)

    第92回(10/21)  姉にコンプレックスを抱き続けてきた私だが、それ以上に何をやってもひとより勝る姉を誇りに思っていた。  何にでも頑張りすぎる姉だった。四人の息子たちの教育、自営の仕事、自分の勉強と、寝る時間を削って、普通のひとの何倍ものことを成した。  姉宅の経済状態は裕福で、だからこそ四... 続きをみる

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  • 井森家の記憶(第91回)

    第91回(10/16)  父の葬儀の折り、山梨から父方の叔父と叔母、従兄弟たちが来てくれた。  彼らは通夜と告別式に参列してくれたのだが、その律儀さの理由は、父が年に数回はひとりで山梨に出かけて、自分の兄弟や従兄弟たちと親睦を深めていたから、と、思う。 父は六人兄弟で上から二番目、次男だった。  ... 続きをみる

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  • 井森家の記憶(第90回)

    第90回(10/10)  76歳で逝った姉は多忙を極めるひとだった。  結婚してからは自営の経理の仕事をしながら、四人の男の子を育てた。  姉の子供たちは四人とも性格が良くて、成績優秀で、四人揃ってK大学を卒業した。  そして、子供たちの教育が一段落すると、次は姉自身が50歳にして大学に入学した。... 続きをみる

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  • 井森家の記憶(第89回)

    第89回(10/6)  井森家の面々はほがらかでくよくよしない者の方が多い。  その筆頭が母で、丸顔で小太りだったせいか見るからにのんきそうだった。  その連れ合い、父は面長で痩せており、いつも苦虫を噛み潰したような顔をして、笑顔を見せず、で、見るからに神経質そうだった。  父は婿養子だったが、井... 続きをみる

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  • 井森家の記憶(第88回)

    第88回(10/3) 思えば、「井森家の記憶」を書き始めたのは去年の11月だった。  書いているうちに、コロナが収まる時まで、たぶん半年先まで、と、思うようになったが、一向にコロナが収まる気配がない。  高齢者の私はコロナ感染が怖くて、不特定多数の者たちと遭遇する公共の乗り物、電車やバスでの外出を... 続きをみる

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