小説、その2「井森家の記憶」

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2020年11月のブログ記事

  • 井森家の記憶(第4回)

    「大和の暮らし」 第4回(11/29)  神奈川県大和市で生を受けた私は、そこで小学一年生まで両親と兄と私、4人家族で平和に暮らした。  大和の住居は県営住宅の平屋の二軒長屋で、敷地は四十坪と広かった。間取りは南向きの六畳の和室、北向きの四畳半の和室、二畳の台所に風呂場だった。  日当たりいい庭は... 続きをみる

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  • 井森家の記憶(第3回)

    第3回(11/27)  井森家の面々は思ったことを、相手の気持ちを考えずに口にした。ゆえに諍いが絶えなかったのだと、思う。  我が夫が、「井森家の種悪の根源は、お義母さんのおしゃべり」と、言い放ったが、母はあることないこと、おひれをつけておもしろおかしくひとに話す癖があった。また、母の話し方はいか... 続きをみる

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  • 井森家の記憶(第2回)

    第2回(11/23)  井森家は横浜駅から横須賀線でひと駅、保土ヶ谷から歩いて10分、だらだら坂の途中にあった。裏が山で、夏はせみの声で騒がしく蚊が大量発生していた。子供時代の私の夏は、蚊に食われた皮膚をひっかいたので、かさぶただらけの汚ない手足だった。  井森家の端っこには裏山から湧き出る清水を... 続きをみる

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  • 井森家の記憶(第1回)

     井森家の記憶 森 あるか 第1回(11/20)  はじめに  2019年、姉(享年76歳)と兄(享年72歳)が相次いで病死した。  父は2001年に84歳で、母は2007年に88歳で逝っている。ふた親は長生きの方だったが、70代で死去した姉と兄は少しばかり早く死を迎えてしまった、と、残念に思う。... 続きをみる

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