小説、その2「井森家の記憶」

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2021年9月のブログ記事

  • 井森家の記憶(第87回)

    第87回(9/22)  結局、姉は高卒後24歳でS電気工事会社の社長と結婚して、次々と四人の男の子を設けた。  結婚後の姉は自分の能力を最大限発揮した。嫁ぎ先の会社の経理を担当して、従業員を 100名まで増やし、夫がサラリーマンの我が家とは桁違いの収入で豊かな生活を営んだ。  そして、母の老後はと... 続きをみる

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  • 井森家の記憶(第86回)

    {12}末っ子の宿命 第86回(9/18)  姉が2年前の3月、兄がその3か月後に相次いで逝った。姉は享年76歳、兄は享年 72歳だった。 2020年の日本人の平均寿命は女性が87歳、男性が81才なので、70代で他界した姉と兄は少々早く死を迎えたのだが、ふたりとも揃って最期は肺がんに冒されて、だっ... 続きをみる

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  • 井森家の記憶(85回)

    第85回(9/11)  私が子供時代、井森家のトイレは西日が当たって夏も汗だくになって辛かったが、冬のトイレはしゃがんで用を足す落下式、俗称ぼっとん便所だったので、用を足す時は下から冷たい風が吹きあがり、寒いの何の、だった。  井森家のトイレが水洗になったのは私が大人になってからだった。  その前... 続きをみる

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  • 井森家の記憶(第84回)

    (11)井森家の冬 第84回(9/7)  私が子供時代の冬は今より寒かった。  現在は部屋をエアコンや石油ストーブなど、スイッチひとつで暖かく出来るが、私が子供時代の井森家の暖房は掘り炬燵と火鉢のみだった。  掘り炬燵は当初は火をおこした練炭や豆炭を入れていたが、そのうち、掘り炬燵用の電化製品に変... 続きをみる

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  • 井森家の記憶(第83回)

    第83回(9/3)  井森家では真夏の晴天の一日、家中の畳を虫干する行事があった。その頃の井森家は平屋で、間取りは六畳の和室ふたつと四畳半と三畳がひとつずつの四部屋だった。  その日は家族全員が朝早く起きて、部屋にある物を片づけた。  畳を庭に干してる間は落ち着いての食事が無理なので、母が昼食のた... 続きをみる

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