小説、その2「井森家の記憶」

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井森家の記憶(第24回)

aruka

第24回(2/6)
姉は高校の卒業式の時、卒業生代表で答辞を読んだ。
父は勉強ばかりの姉に、「夜遅くまで起きてるな! 電気代がもったいない! うちの手伝いをしろ!」などと、鬼の形相で怒鳴っていた。
そして、社会人となって学校の勉強から解き放たれた姉だったが、就職した銀行は残業の連続で、毎日帰宅時間が遅かった。
 一説によると、銀行は午後三時に窓口は閉めるが、そのあとはその日の収支が一円でも合わないと、計算が合うまで職場に居残りされるらしい。
 学生時代、勉強ばかりしていた姉はよく鼻血を出したのだが、社会人となった姉の次なる親の心配は帰宅時間の遅さで、父は夜遅く帰宅する姉に、「今まで、どこで、何をしてたんだ!」と、大声を張り上げていた。
 仕事熱心な姉だったが、同じ職場にいた彼に失恋してしまい、生きるの死ぬのと大騒ぎをしたので、父が姉を強引にその銀行を辞めさせた。
 姉の次なる就職先は高校時代の恩師の紹介によるシェル石油だった。あの当時、日本の企業はまだ土曜日が出勤だったが、外資系企業のシェル石油は週休二日制だったので、時間的な余裕が生じた姉と、二流高校ながら高校受験を終えた私、社会人の姉と高校生になった私は、ようやっと会話を交わす姉と妹となったのだった。
    (続く、第25回)